【シリーズ】サステナビリティ開示基準が示す新時代②|サステナ推進企業が直面する「次のESG課題」

RIMM Japan
2026年3月27日
SSBJ基準の登場によって、ESG開示が「企業価値を向上させる経営戦略」へと変化している中、プライム市場をはじめとする上場企業の実務で直面する課題と取り組むべきポイントを整理します。
サステナビリティ開示は、もはやレポート作成の問題だけではありません。前回の記事でお伝えしたように、企業のリスク管理や経営戦略と密接に関わる、重要な情報開示テーマとなっています。 特にプライム市場に上場する企業では、すでに有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示、TCFD対応、ESG評価機関への対応などに取り組み、一定の開示体制を構築している企業も少なくありません。 しかし現在、多くの企業が直面しているのは、その次の課題です。
ESG開示は企業の情報管理の一環に
これまで多くの企業では、ESG開示にさまざまな形で対応してきました。取り組みの重要性は言うまでもありませんが、実務の現場では次のような問題が生じています。
開示基準の要件に整合しているか確認が難しい
毎年同じデータ収集作業を繰り返している
社内の複数部署からデータを収集する必要がある
その結果、ESG対応が毎年の作業として固定化してしまっているケースも少なくありません。しかし、ISSB基準やSSBJ基準の文脈では、ESG開示は単発の対応ではなく、企業の情報管理プロセスの一部として扱われることが前提となっています。
ESG開示は、対応するものから、継続的に管理するものへと変化しているのです。
さらに、今後のESG開示において重要になるのが第三者保証です。 ここでいう第三者保証とは、企業が発行するサステナビリティ報告書(ESGレポートや統合報告書など)に記載されたデータや情報が、「正確で信頼できるものか」を独立した外部機関が検証し、証明することを指しています。財務情報と同様に、サステナビリティ情報についても、将来的には監査や保証が求められる可能性が高いと考えられています。
すでに欧州では、CSRDのもとでサステナビリティ情報の保証や監査制度の導入が進んでいます。日本でも、SSBJ基準の適用が進む中で、将来的には同様の流れが広がる可能性があります。
その場合、企業に求められるのは、データの整合性、情報のトレーサビリティ、開示プロセスの透明性です。
つまりESG情報も、財務データと同じ水準で管理される情報になっていくと考えられます。
サステナ推進企業のリアルな課題
ESG担当者が直面している「見えない負担」
ESG開示の重要性は多くの企業で認識されつつあります。
しかし、現場のESG担当者の声を聞くと、理想と現実のギャップも見えてきます。実際には、次のような課題に直面しているケースが少なくありません。

1. ESG対応が「担当者業務」に集中してしまう
多くの企業では、ESG対応をサステナビリティ部門、IR部門、経営企画部門など一部の部署が中心となって担っています。
しかしESG情報は、本来、環境、人材、調達、ガバナンスなど企業全体に関わる情報です。それにもかかわらず、実務ではESG担当者が社内の各部署にデータを依頼して回る構図になりがちです。
その結果、ESG対応が担当者個人の調整業務に偏ってしまうケースも少なくありません。
2. 開示基準の要件に整合しているか確認が難しい
ESG開示において、もう一つ大きな課題となるのが、開示内容が基準に整合しているかどうかの判断です。ISSB基準やSSBJ基準では、サステナビリティ情報をただ説明するだけではなく、企業価値に関連する情報として開示することが求められています。そのため、
どの情報が開示対象となるのか
どの粒度で記載すべきか
財務情報とどのように接続するか
といった判断が必要になります。しかし実務では、
「この内容で基準に沿っているのか分からない」「評価機関ごとに求められる水準が異なる」「開示しているつもりでも、十分ではない可能性がある」
といった不安を抱えるケースも少なくありません。特に、複数の開示基準や評価フレームワークが併存する中では、形式的には対応していても、基準の意図に沿った開示になっているかを確認することが難しいのが実態です。
その結果、ESG担当者が
過去の開示内容を参考に手探りで作成する
外部評価結果を見ながら修正する
都度解釈を変えて対応する
といった対応に頼らざるを得ない状況も生まれています。
このように、開示基準との整合性確認は、単純なチェック作業ではなく、判断と解釈を伴う高度な業務となっており、ESG対応の難易度を大きく引き上げる要因の一つとなっています。
3. データ収集が毎年リセットされる
もう一つ大きな課題が、データ管理です。 ESG情報は企業のさまざまな部署に分散しています。
例えば、環境データは工場・設備管理部門、人材データは人事部門、サプライチェーン情報は調達部門、といった形です。
そのため、毎年の開示作業では、各部署へのデータ依頼、Excelでの集計、開示資料への反映といった作業が繰り返されます。
その結果、ESGデータが企業の資産として十分に蓄積されないという問題が生じています。
4. ESGの価値が社内で伝わりにくい
ESG担当者が抱えるもう一つの悩みが、社内理解の壁です。
経営層では重要性が認識されていても、現場レベルでは、なぜこのデータが必要なのか、どの制度に対応するための情報なのか、企業価値とどう関係するのかが十分に共有されていないこともあります。
その結果、データ提出の遅れや情報の不整合が発生し、ESG対応の負担が担当者に集中してしまうことがあります。
ESG担当者が求めているもの
こうした課題の中で、多くの企業が求めているのは、ESG対応を個人の努力に依存しない仕組みです。
例えば、
ESGデータの一元管理
開示プロセスの標準化
社内横断の情報共有
といった体制がそれに当たります。
ISSB基準やSSBJ基準が目指しているのも、まさにこうした企業全体でのサステナビリティ情報管理だと言えるでしょう。
「企業のデータ戦略」としてのESG開示
これらの課題に共通しているのは、ESG開示を対応業務として扱ってきたことです。
一方で、ISSB・SSBJの世界観では、ESGはデータとして管理され、経営と接続され、企業価値を説明する基盤として位置づけられています。
つまり必要なのは、個別業務を場当たり的に改善することではなく、ESG対応の構造そのものを見直すことです。
そのため現在、多くの企業が検討しているのが、ESGデータ管理の仕組み化です。
ISSB基準やSSBJ基準の登場によって、ESG情報は企業の重要なデータ資産になりつつあります。企業はこれまで、財務データや経営データを中心に管理してきました。しかし現在では、温室効果ガス(GHG)排出量、エネルギー使用量、人材関連指標、サプライチェーン情報といったサステナビリティ情報も、企業価値に影響するデータとして扱われています。その意味で、ESG開示は企業のデータ基盤整備とも密接に関係しています。
これからのESG対応において重要なのは、一時的な対応でも、担当者任せの運用でもなく、継続的に機能する仕組みを整えることです。
ESGをプロジェクトではなく、経営インフラとして捉え直すことが、次のステージに進むための鍵になります。
RIMMが支援できること
こうした背景の中で重要になっているのが ESGデータ管理の仕組みです。
RIMMでは、myCSO(あなたの会社の専属デジタルCSO)を中心としたESGプラットフォームを提供しています。
このプラットフォームでは
IFRS S1/S2やSSBJ基準の要求事項の整理・把握
(定性・定量)各要求事項に対応する情報整理
開示基準との整合性確認
などを支援しています。
ISSB基準やSSBJ基準への対応を進めながら、企業がESG情報をただの開示作業ではなく、企業価値を高める経営資産として活用できるようサポートしています。
おわりに
IFRS S1・S2、そしてSSBJ基準の登場によって、ESG開示は新しい段階に入りました。それは、CSR活動の説明やESGレポート作成の段階から、企業価値を説明するための情報基盤へと進化しています。
企業にとって重要なのは、ESG開示を行うかどうかではなく、ESG情報をどのように管理し、企業価値の説明に活用するかです。
次回の記事では、大手・上場企業と取引をする中堅企業にとってのESG開示の現実を取り上げ、今後に向けた実践的なアプローチを解説します。
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