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ゼロからわかるサステナ実務① ~第1回:ESGって結局何?担当1年目のための基本整理~

RIMM Japan

2026年7月31日

ESGとは何か、SDGs・CSR・CSVとの違い、E・S・Gそれぞれの要点や具体例、Scope 1/2/3、ジェンダー平等、社外取締役比率まで、初任担当者が抱きやすい疑問にやさしく答える解説記事です。

「ESGって結局何をすればいいの?」――サステナビリティ推進の実務を初めて担当することになった方の多くが、最初にこうした疑問にぶつかります。本記事では、ESGの基本と、SDGs・CSR・CSVとの違いを整理したうえで、企業が取り組む理由、そして顧客や社内への説明のコツまでを実務目線でまとめました。これからESGに向き合う方の「まず何を理解すればよいか」を解消する入り口としてお役立てください。

【はじめに】ESGは「広くて掴みどころがない」テーマ

ESGという言葉自体は、ニュースや取引先とのやり取りの中で目にする機会が増えています。しかし、いざ実務担当になってみると、「概念が広すぎて、どこから手をつければよいかわからない」と感じる方が少なくありません。

特に顧客との会話では、次のような素朴な疑問を受けることがよくあります。

  • SDGsとESGは何が違うのか

  • CSRやCSVとどう整理すればよいのか

  • E・S・Gはそれぞれ具体的に何を指すのか

これらに自分の言葉で答えられるようになることが、サステナビリティ実務の最初の一歩といえます。


【課題】用語が先行し、「なぜやるのか」が伝わりにくい

ESGを勉強し始めると、専門用語や開示制度の話が先に目に入りやすく、「結局ESGは何のためにやるのか」という本質的な部分が後回しになりがちです。その結果、社内でも顧客との会話でも、「対応しなければならないもの」という義務感だけが先行してしまうことがあります。

大切なのは、ESGを単なる流行語や開示項目としてではなく、企業が社会課題の解決に向き合いながら、事業としての価値も生み出していく考え方として捉えることです。ここを最初に押さえておくと、その後の理解がスムーズになります。


【解決策】まず押さえたい基本の整理


ESGとは何か

ESGとは、Environment(環境)Social(社会)Governance(企業統治) の頭文字を取った言葉です。企業を評価したり経営のあり方を考えたりする際に、財務情報だけでなく、環境・社会・統治の観点も重視する考え方として使われます。

ポイントは、ESGが「何を目指すか」だけでなく、「どう実現していくか」に関わる考え方だという点です。義務感だけで捉えるのではなく、社会課題への対応を通じて企業価値の向上にもつなげる実践的な手段として整理すると理解しやすくなります。


SDGs・CSR・CSVとの違い

初学者への説明で特に有効なのが、「目標と手段の違い」という整理です。

  • SDGs(Sustainable Development Goals / 持続可能な開発目標):持続可能な社会の実現に向けた「目標」

  • ESG:その目標に近づくために、企業が経営や事業活動の中で取る「手段・視点」

  • CSR(Corporate Social Responsibility / 企業の社会的責任):企業が社会に貢献する考え方

  • CSV(Creating Shared Value / 共通価値の創造):社会課題の解決と企業の利益創出を両立させる考え方

ESGの本質はCSVに近いものと捉えると整理しやすくなります。つまり、社会に良いことをするだけでなく、企業としても持続的に成長できる形で取り組むことが重要だという考え方です。一方で、CSRのような社会的責任の視点も不要になるわけではなく、両方を意識することが望ましいといえます。



E・S・Gそれぞれの要点

E:Environment(環境) ―地球への責任

企業活動が地球環境へ与える影響をどう捉え、どう減らしていくかという視点です。地球を守ることに加え、環境配慮を求める取引先との関係を守るためにも欠かせません。

  1. 気候変動への対応が中心テーマであり、温室効果ガスの排出削減や省エネルギー・再生エネルギーの活用が代表的な取り組みです。

  2. 大気汚染対策、海洋保全、生物多様性の保全、廃棄物対策など、資源の使い方や環境負荷の低減も重要な要素です。

  3. 環境対応はリスク対策であると同時に、競争力強化の機会でもあります。規制強化や取引先要請への対応に加え、環境配慮型の製品・サービスは新たな顧客評価や市場機会につながる可能性があります。

具体的な項目例:温室効果ガス排出量の削減、気候変動対策、再生エネルギーの活用、森林破壊の阻止、生物多様性の喪失の阻止、廃棄物対策 など


S:Social(社会) ―人への責任

企業が従業員・顧客・取引先・地域社会など、多様な人々とどう関わるかを問う視点です。良い商品やサービスを生み出すには人が欠かせないため、働きやすい環境を整え、人材を確保し、企業として成長していくために重要な観点です。

  1. 労働安全、健康、働きやすさ、人材育成、ジェンダー平等をはじめとする多様性の尊重など、従業員への配慮は企業の基盤です。

  2. 製品・サービスの安全性、品質、個人情報保護、人権への配慮など、顧客や社会からの信頼が問われます。

  3. 人権問題やサプライチェーン上の課題に適切に向き合えない場合、評判リスクや取引機会の喪失につながるおそれがあります。

具体的な項目例:ジェンダー平等、雇用創出、労働者の権利保護・安全衛生の確保、製品の安全性の確保、あらゆる差別の撤廃、地域社会への支援 など


G:Governance(企業統治) ―会社経営の責任

企業が適切で公正な意思決定を行い、健全に運営される仕組みを指します。大きな損失につながる不祥事などを未然に防ぎ、会社を長く存続させるために必要な、見えにくいけれどもEとSの取り組みを実効性あるものにする土台です。

  1. 取締役会の監督機能、社外取締役比率、意思決定の透明性、責任の所在の明確化など、健全な経営判断を支える仕組みです。

  2. 内部統制やコンプライアンス体制、リスク管理体制が不十分だと、贈収賄などの不正や不祥事につながり、大きな信頼失墜を招くおそれがあります。

  3. 環境や社会の課題に取り組む方針を定め、実行し、継続的に改善するには、ガバナンスが欠かせません。GはEとSを支える基盤といえます。

具体的な項目例:社外取締役比率、コンプライアンス体制、情報セキュリティ、情報開示の透明性、適切な納税の遂行、贈収賄などの汚職防止、リスク管理体制の構築 など



顧客に説明する際は、「Eは地球環境への向き合い方、Sは人や社会との向き合い方、Gはそれらを正しく進めるための会社の仕組み」と伝えると、全体像をつかんでもらいやすくなります。


なぜ企業がESGに取り組むのか

企業がESG課題の解決に向けてアクションを起こすことは、現代の人にも未来の人にも過ごしやすい地球環境や社会の実現につながります。この効果は、大きく3つの視点で整理するとイメージしやすくなります。

  • 地球のメリット:地球が地球であり続けること、緑の豊かさや生物多様性が保たれること、海面上昇などの環境変化を防ぐこと

  • 人々のメリット:安心して買い物ができること、差別やいじめがなくなること、雇用が安定し貧困の心配が減ること、綺麗な水を使い続けられること、健康に過ごせること

  • 企業のメリット:より良い人材を雇用しやすくなること、企業イメージが向上すること、金融機関からの融資を受けやすくなること、取引先として選定されやすくなること、従業員の幸福度が上がること、不正などが減ること

社会や地球への貢献と、企業自身の持続的な成長は対立するものではなく、両立させることがESGの本質です。実務で顧客に説明する際は、社会貢献の側面だけでなく、こうした企業側のメリットもあわせて伝えると納得感が高まります。

  • 社会や市場からの信頼を得やすくなる

  • 投資家・取引先・求職者から選ばれやすくなる

  • 法規制や不祥事などのリスクに備えやすくなる

  • 新しい商品・サービス開発のきっかけになる

  • 長期的な企業価値向上につながる

ESGはコスト負担として捉えられがちですが、ボランティアや短期的な利益を追う施策ではなく、将来の売上や取引、企業価値を守るための投資と考えることができます。


初任担当者からよくある疑問

全体像に関する疑問

Q. ESGとSDGsは同じものですか?  同じではありません。SDGsは社会全体が目指す「目標」で、ESGは企業がその目標に近づくために活用する「経営上の視点・手段」と考えるとわかりやすいです。


Q. ESGはボランティアのようなイメージがあり、会社としての利益がどこにあるのかわかりません。  ESGは、ボランティアや短期的な利益を追う施策ではなく、将来の売上や取引、企業価値を守るための投資と捉えると理解しやすくなります。


Q. ESG対策をしているのは大企業だけで、お金がかかりそうなイメージがあります。  最近は取引先や採用の観点から、大企業以外にも取り組みが広がってきています。「選ばれ続けるために自社のリスクや強みを可視化して経営に活かす」という経営基盤づくりの考え方に近く、企業規模を問わず関係するテーマです。


Q. ESGやSDGsの知識がなく、どこから手をつければよいのかまったくわかりません。  ESGやSDGsは範囲が広いため、最初からすべてを理解している企業は多くありません。まずは自社の現状を整理することが第一歩で、そのためにシステムなどのツールを活用するのも一つの方法です。


Q. E・S・Gのうち、どれから始めればよいですか?  自社にとって影響が大きいテーマから始めるのが現実的です。たとえば製造業なら環境負荷、労働集約型の業種なら人材や人権、グループ経営や上場企業ならガバナンスが重要になることがあります。すべてを一度に完璧に対応するより、重要度の高いものから整理することが大切です。


Eに関する疑問

Q. Scope 1・2・3がよくわかりません。  Scope 1(自社の直接排出)は商品を作る工程などで自社が直接排出するもの、Scope 2(エネルギー起源の間接排出)は自社が購入した電気やガスなどに伴う排出、Scope 3(その他の間接排出)は配送やサプライチェーン全体で発生する排出を指します。


Q. 温室効果ガス排出量の計測方法がわからず、手間がかかりそうです。  実際には電気代やガソリン使用量など、すでに社内にあるデータから算定するケースがほとんどです。まずは電気使用量など比較的把握しやすい項目から始めて、範囲を広げていくとよいでしょう。


Q. 廃棄物対策として、企業は具体的に何ができますか?  まずは自分たちがどのようなゴミをどのくらい出しているか、どのくらい減らせるかを把握するところから始めるのがおすすめです。身近なところから着手できるテーマです。


Sに関する疑問

Q. ジェンダー平等に対して、どのような施策をすればよいのかよくわかりません。  男性と女性が同じように活躍できる環境を整えることが基本です。まずは社内の男女比率など、数値化できるものから現状を把握していくとよいでしょう。


Q. ESGに取り組むことで、雇用は本当に増えるのですか?  すぐに増えるとは限りませんが、離職率の低下につながり、その情報を知った求職者の入社希望が増える可能性はあります。


Q. 地域社会への支援を行った先に何が生まれるのですか?  ESGは社会貢献そのものがゴールではなく、社会貢献をしながら企業価値を高めることが目的です。地域社会からの信頼は、中長期的に企業の評判や事業基盤を支える要素になります。


Gに関する疑問

Q. コンプライアンス研修のようなことを行えばよいのでしょうか?  研修も重要ですが、それだけでなく、問題が起きた際に迅速に対応できる仕組みを社内に作ることが必要です。


Q. 納税はしっかり行っていますが、税理士などが不正をした場合はどうなりますか?  個人任せにせず、チェック体制や承認フローをあらかじめ整えておくことが、不正を未然に防ぐために重要です。


Q. 社外取締役比率を増やすというのは、具体的にどのようなアクションを行えばよいのでしょうか?  比率を増やすこと自体が目的ではありません。社内の経営陣だけではチェックしきれないリスクや課題を、外部の目線で確認できる体制を整えることが目的です。


顧客説明での伝え方のコツ

  • 抽象論から入らない:「ESGは重要です」だけでは伝わりません。自社の事業や現場に引きつけて説明することが大切です。

  • SDGsとの違いを最初に整理する:「目標がSDGs、企業が動く視点・手段がESG」という整理は理解を助けます。

  • 社会貢献だけでなく経営メリットも伝える:信頼、リスク管理、競争力の観点を加えると納得感が高まります。

  • E・S・Gを分けて話しすぎない:実務では相互に関係しています。たとえば人権配慮はSの論点ですが、推進体制がなければGの課題でもあります。

なお、TCFD、SSBJ(Sustainability Standards Board of Japan / サステナビリティ基準委員会)などの開示基準への具体的な言及が必要な場合は、各基準設定主体や金融庁等の最新の公式情報源で要確認のうえご参照ください。


まとめ

ESGは、環境・社会・企業統治の観点から、企業が持続的に成長するための考え方です。SDGsが目標であるのに対し、ESGは企業がその実現に向けて行動する際の重要な視点といえます。そしてその本質は、社会課題への対応と企業価値向上を両立させることにあります。

E・S・Gそれぞれの基本を簡潔に押さえつつ、初任担当者が抱きやすい疑問に先回りして整理しておくことで、社内理解を進める場面でも、顧客への説明の場面でも自信を持って対応できるようになります。ESGを初めて学ぶ方にとって、本記事がその入り口の一つになれば幸いです。



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